こんにちは、Kです。
今日は肝臓に関係する薬について紹介していきます。
肝硬変とは
【原因】
HCVやHBV、アルコールが原因となって、持続的な肝細胞壊死と再生の繰り返しにより、正常な肝構造が破壊され、肝臓が小さく硬くなってしまう疾患です。他にも脂肪肝や非アルコール性であっても肝硬変に進展することもあります。
【症状・所見】
非代償期は自覚症状に乏しく、非代償期には肝機能障害や門脈圧亢進をきたします。
アルブミン↓:浮腫、腹水、胸水
血液凝固因子↓:出血傾向
脂質代謝障害
ビリルビン代謝障害:黄疸
ホルモン代謝障害:女性化乳房
薬物代謝障害
肝性脳症
貧血
出血傾向
食道・胃静脈瘤
消化管出血
ここでは簡易的に書いてるのでここでは参考程度に、教科書など参照願います。
【重症度分類】
肝硬変の重症度分類にはChild-Pugh(チャイルドピュー)分類が使用されます。
1点 | 2点 | 3点 | |
脳症 | ない | 軽度(I度、Ⅱ度) | ときどき昏睡(Ⅲ、Ⅳ度) |
腹水 | ない | 少量(コントロール容易) | 中等量(コントロール困難) |
血清ビリルビン値(mg/dL) | 2.0未満 | 2.0~3.0 | 3.0超 |
血清アルブミン値(g/dL) | 3.5超 | 2.8~3.5 | 2.8未満 |
PT(%) | 70超 | 40~70 | 40未満 |
Child A:5~6点,B:7~9点,C:10~15点
実際に薬剤師がChild-Pughを評価することは難しいかもしれませんが、医師がカルテに記載していることが多いのでそれを参考にしましょう。
肝硬変の治療
代償期は生活指導(禁酒、便秘を避ける)、食事療法(高エネルギー、減塩食)、肝庇護療法(ウルソデオキシコール酸、グリチルリチン酸)、HBVやHCVに対しては抗ウイルス療法を行います。
非代償期は低たんぱく食、合併症に対する薬物療法が行われます。
合併症 | 使用薬 |
腹水 | ・利尿薬(抗アルドステロン薬、ループ利尿薬) ・アルブミン製剤 |
肝性脳症 | ・ラクツロース ・分岐鎖アミノ酸製剤 ・非吸収性抗菌薬(商品名:リフキシマ) |
黄疸 | ・利胆薬:ウルソデオキシコール酸 |
突発性細菌性腹膜炎(SBP) | ・抗菌薬 |
食道・胃静脈瘤 | ・β受容体遮断薬(出血予防) ・バソプレシン ・ビタミンK(PT延長防止) |
それでは、この薬物療法のうちぜひ患者さんに説明してもらいたい項目について解説していきます。
分岐鎖アミノ酸製剤(BCAA)
商品名リーバクトですね。分岐鎖アミノ酸製剤のバリン・ロイシン・イソロイシンを含み、適応については添付文書より「血清アルブミン値が3.5g/dL 以下の低アルブミン血症を呈し、腹水・浮腫又は肝性脳症を現有するかその既往のある非代償性肝硬変患者のうち、食事摂取量が十分にもかかわらず低アルブミン血症を呈する患者、又は、糖尿病や肝性脳症の合併等で総熱量や総蛋白(アミノ酸)量の制限が必要な患者」とされています。
多くの方がただの栄養剤でしょ?とおっしゃいます。しかも味がとても苦く、顆粒は水にも溶けにくいのでアドヒアランスが悪くなる薬の代表だと個人的には思っています(胃管から投与するときは詰まってしまうので、私の施設では顆粒をさらに粉砕して調剤しているのですがこれがまあ大変)。ゼリーも味の面であまり良くない評判。
ぜひともリーバクトを服用している意味をしっかりと理解し説明できるようにしましょう!
肝硬変の患者さんは肝臓の機能が低下しているので、肝臓が担っているアルブミンをはじめとするたんぱく質の産生やアンモニアの解毒ができなくなっています。そこで、肝臓の代わりに筋肉がBCAAを消費しながら役割を果たすんです。
その結果、体内のアミノ酸バランスが崩れてしまいます。肝硬変が進行すると慢性的にBCAA不足となり、食事からは必要量を摂取できなくなるために、薬として服用することが大事になるわけです。アンモニアが解毒されれば肝性脳症の改善につながりますし、たんぱく質の合成がすすめば浮腫や腹水の改善がみこめます(低アルブミンでは血管内の水分が血管外に移動するため浮腫や腹水・胸水になってしまいます)。
アミノレバンEN配合散
これもただの栄養剤でしょ?と言われるシリーズです。
慢性肝不全では、本来であれば高カロリー、高タンパク、高ビタミン食が望ましいとされていますが、アミノ酸の代謝異常が主な原因の一つとされている肝性脳症を伴う患者さんでは、タンパク制限食の摂取を余儀なくされていました。そこで肝性脳症を伴う慢性肝不全患者の栄養状態の改善目的に作られたのがアミノレバンEN散です。
アミノレバンは糖質、脂質、タンパク質、さらには電解質、ビタミン、微量元素を含みます。もちろんFischer比(BCAA/AAAモル比)が高くなるように設計されています。1包あたり213kcalとなりますので、カロリーオーバーには注意が必要です。用法用量は1回1包1日3回適宜増減となっており、患者さんの病態や食事摂取量によって調整されます。
ここで一つ紹介したいのが、LES(Late Evening Snack)療法です。アミノレバン就寝前投与を見たことはありますか?例えば、朝食が7時、夕食が19時だとすると、夕食から朝食まで12時間あきますよね。
肝硬変患者では、もともとエネルギー消費量が多い一方、肝臓でのグリコーゲンの貯蔵量も少なく慢性的にエネルギーが欠乏した状態です。そのため、肝硬変患者では、夕食から朝食までの間に健常な方が3日間絶食にしたときと同程度の飢餓状態になり、毎朝ダメージを受けています。
そこで、夜食として寝る前に200kcal程度の軽食(アミノレバン1包)を摂取すると、夜間のエネルギー不足がなくなり、栄養状態が改善されます。
アミノレバンの味は工夫されていますが、患者さんによっては「こんない甘いもの夜寝る前に飲みたくないよ」と言われたことがあります。ですが、LES療法の目的について説明すると「それなら頑張ってみる」と言ってもらえたことがあります。
あとは冷やしたり、氷を入れたり、逆にぬるま湯で溶かしたり、ストローで飲んだりなど、患者さんそれぞれにあった飲みやすい方法を見つけてもらいましょう!
まとめ
いかがでしたか?BCAA自体が苦いため、リーバクトやアミノレバンどちらも飲みやすい味とは言えません。私もアミノレバンについては試飲したことがありますが、これを毎日と考えると…となりました。
実際に何でリーバクト・アミノレバンを飲んでいるのか説明すると、継続して飲もうと思ってくださる患者さんが何人もいましたので、ぜひ皆さんにも日常業務に活かしていただけたら嬉しいです。
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