口腔カンジダの治療薬と処方例

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入院患者さんのカルテをみていると、よく歯科口腔外科にコンサルトされているのを見かけます。ビスホスホネート製剤導入前や化学療法開始前の口腔内の確認、また、化学療法や放射線治療中の口腔カンジダ、免疫抑制剤服用中の口腔カンジダなどなど。

実は口腔カンジダの治療薬について医師より相談を受けたことをきっかけに、口腔カンジダについて勉強しよう!と思い、本記事を書いています。

それでは口腔カンジダの原因や治療薬について学んでいきましょう!!

口腔カンジダとは

口腔カンジダは口腔粘膜へのカンジダ感染(Candida albicansが多い)が原因となって起こります。口腔内の常在菌の一種で通常病原性は低いですが、副腎皮質ステロイド薬や糖尿病、全身衰弱などで免疫力が低下していたり、唾液量の減少、長期間の抗菌薬などにより常在菌のバランスが崩れることでカンジダ菌が異常に増殖し病原性を発揮することで発症します。他にも、吸入ステロイド薬のうがいが不十分な場合の発症もありますね。

特に、HIV感染患者、化学療法患者、ステロイド長期投与患者などの免疫不全患者がハイリスクとなります。骨髄抑制などの免疫低下状態では、口腔カンジダは憎悪する恐れがあるので要注意ですね。

入院患者さんの口腔内の観察を看護師さんがしてくださり、舌や頬に白い苔のようなものが付着しているのを発見するとすぐに医師へ報告し、歯科口腔外科へコンサルトしているのをよく見かけます。

治療薬

日本医真菌学会侵襲性カンジダ症の診断・治療ガイドラインでは、下記のように推奨されています。

軽症例では、抗真菌薬の局所投与が原則となります。

アムホテリシンBシロップ(ファンギゾン®シロップ)1回1-2mL 1日3-4回経口投与(内服または含嗽)

  • 内服:数秒間口に含んだ後嚥下(保険適応)
  • 含嗽:蒸留水で50-100倍に希釈して投与(保険適応外)

ミコナゾールゲル(フロリード®ゲル経口用2%)ミコナゾールとして1回50-100mg 1日4回 口腔内塗布

イトラコナゾール内用液(イトリゾール®内用液1%)20mLを数回に分けて含嗽

中等症以上では、

フルコナゾールカプセルもしくは懸濁液100-200mg 1日1回経口投与(保険適応外)もしくはホスフルコナゾール(プロジフ®静注液100mg)100-200mg 1日1回静注 7-14日間 (保険適応外)

イトラコナゾール内用液(イトリゾール®内用液1%)20mL 1日1回経口投与 7-14日間

どうやって処方される?

私の経験では口腔カンジダについては軽症例しか見たことがないため、これ以降は軽症例についてのお話とさせていただきます。

私の勤務先では、口腔カンジダについては原則ファンギゾン®シロップがまず処方されます。理由としては、全身作用が少なく、薬物相互作用もないことがあげられます。ファンギゾンシロップの添付文書をみると、「小児に対し」となっていますが成人に多数処方されています。

処方例は内服、含嗽とありややこしいですよね。

<内用>
ファンギゾン®シロップ100mg/mL 3mL 3X
原液で指示される場合は、製品に添付されているスポイトなどで直接口腔内へ入れ、舌で患部に広くゆきわたらせ、できるだけ長く含んだ後に嚥下します。
希釈を指示される場合もあります。だいたい10、50、100倍で指示されるようですね。
室温では、褐色バイアル瓶にて保存した場合、50倍希釈液で2週間安定、100倍希釈液で1週間安定とインタビューフォームに記載されています。
できるだけ長くってどれくらいだよって思いますが、明確な基準はなく、15-30秒と記載している記事を見たことがあります。上記ガイドラインでは数秒間と記載されており、嘔気などで難しい場合は10秒程度、無理のない範囲内でと患者さんに伝えるので問題ないのではないでしょうか。見た目や味もあまり良くない薬なので、治療を続けてもらえるよう、妥協点を見つけていく必要がありますね。
<外用(含嗽)>
ファンギゾン®シロップ100mg/mL 6mL 3X
▶(調剤例)300mLポリ瓶を添付し、説明書で次のように指示します。
▶原液6mLを測り、300mLポリ瓶へ。300mLの目盛りまで水を入れて、キャップを締めてよく振る。これで3回分(1日分)となるので、1回100mLでうがいし翌日には新たに調製してもらいます。
▶ファンギゾンシロップの含嗽は保険適応外となるため、内用で処方し含嗽を指示している場合があります。

施設によって調剤内規は異なりそうなので、もしTwitterなどで情報を得られたら追記しますね。

患者さんによってはファンギゾンシロップに拒否反応を示す方もいます。また、嚥下が難しい場合もあります。そのときにフロリード®ゲルが処方されていますね。ただし、併用薬によっては使用できないので注意です!

フロリードゲル®経口用2% 

口腔カンジダにおいては、「ミコナゾールとして1日200~400mg(ミコナゾールゲル10~20g)を4回(毎食後及び就寝前)に分け、口腔内にまんべんなく塗布する。なお、病巣が広範囲に存在する 場合には、口腔内にできるだけ長く含んだ後、嚥下する。」

製剤1g中ミコナゾール20mg含有されています。5g製品の場合は、1日量は2-4本になりますね。

皆さんご存知かと思いますが、ワーファリン®との併用は禁忌であり、メーカーより適正使用情報が発令されていますね。エーザイ®発行のWarfarin適正使用情報相互作用各論編より、ワーファリン®とフロリード®ゲルの相互作用についての症例を一つ抜粋します。

52才男性。弁置換術後にワルファリンを投与して、INRは2.0付近に維持されて いた。合併症の喘息治療用吸入ステロイドに起因する口腔カンジダ症を発症した。ミコナゾール・ゲル 300~400mg/日の服用を開始した2週後、口腔内の出血が止まら なくなり、翌日、INR は10以上と測定不能で、緊急入院となった。ビタミン K を投与し、ワルファリンとミコナゾール・ゲルを中止した。入院2日目、INRが2.1とな り、ワルファリンを再開したがINRは安定せず、ミコナゾール投与開始前のワルファリン投与量でINRが安定するまでに約 3ヵ月を要した。

相互作用、あなどれません。
他にもハルシオン®、カルブロック®、リポバス®、イグザレルト®なども併用禁忌に設定されていますので確認してみてください。

電子カルテの入力システムの理解不十分でフロリード®ゲルが1本しか処方されていない、なんてこともあるのでたまに疑義照会します。あと、外用で処方されているので内用に変更してもらったりもあります。

ファンギゾン®のオレンジ色の液体を口に含んだり、ゲルを口の中に塗って飲み込むというのは患者さんにとってかなりストレスになりますよね。しかし、口腔内の症状を少しでも早く改善するために、集中して治療に臨めるよう服薬指導していけたら良いですね。

ちなみに冒頭で記載していた医師に相談されたことは、歯科口腔外科から推奨されたファンギゾン®シロップを患者さんが拒否している場合、代替案は何かというものです。併用薬に問題ないことを確認してフロリード®ゲルを推奨しました。

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