ステロイドのちょっとした疑問

Steroid-question

ステロイドを使用している患者さんには様々な背景があります。

膠原病など長期にわたって服用が必要な人、炎症性腸疾患など一時的に高用量を服用して寛解導入して終了する人、重症筋無力症などステロイドパルス療法として短期間の点滴で終了する人…など様々です。

これまでに様々な症例をみてきましたが、その中で私が疑問に思ったり患者さんへの説明のために勉強した項目を紹介していきます。

隔日投与

隔日投与法は、2日に1回朝にまとめてステロイドを投与する方法です。ステロイドは毎日飲まなくて良いの?と思いませんか?

隔日投与法は投与期間が長期間になる疾患に対して副作用の軽減を目的として、主にプレドニゾロンで行われます。

天然型のステロイドであるヒドロコルチゾンは、生物学的半減期が8-12時間と短いので隔日投与に用いることはできません。一方、デキサメタゾンやベタメタゾンは生物学的半減期が36-54時間と長いため隔日に使用しても副作用も減少しません。

プレドニゾロンは血中半減期が160-200分、生物学的半減期が12-36時間の中間型なので、隔日投与により非投与日の薬効は弱くなりますが、下垂体抑制や副腎皮質機能抑制から解放されます。

隔日投与により軽減される副作用は、満月様顔貌などのクッシング症候、易感染性、下垂体-副腎機能抑制などです。

下垂体-副腎機能抑制への影響に関しては、隔日投与法によって内因性コルチゾールレベルの基礎値の抑制がある程度見られますが、CRH負荷テスト、ACTH刺激試験、インスリン負荷テストにおける反応はほぼ正常に認められます。

 

糖尿病を合併しており、インスリン治療を要している場合は投与日と非投与日で血糖コントロールが変動するため隔日投与は推奨できません。また、膠原病症状のコントロールが困難な場合も推奨できません。

投与日、非投与日で精神状態が変わり、投与日には多幸感、非投与日には抑うつ的になる場合があるので、事前に患者さんに説明しておく必要があります。

白血球増多

化学療法の制吐剤としてデカドロン®︎注・錠がよく用いられていますね。

化学療法投与後すぐに退院するケースもありますが、一度血液検査を確認してから退院となる場合、よく見る医師のアセスメントとして、「白血球増加はステロイドの影響か」というものです。

なぜ白血球が増加するのでしょうか??

ステロイドを投与すると体内量の1/3を占める骨髄の成熟好中球プールが血中に移動するために末梢血の好中球数が増加します。一方、リンパ球のうち多くは血管外と血管の間を毎日数回往復しますが、ステロイドはリンパ球が血管内へ戻るのを止めてしまい、循環血液中のリンパ球数は減少します。

この現象に対する具体的な対処は必要なく経過観察となります。

 ステロイドパルス療法

ステロイドパルス療法は、ステロイドを点滴で大量に短期間(主に メチルプレドニゾロン注1000mgを3日間)投与する方法です。

長期間投与する治療法とは異なるので、どのように副作用について伝えましょう?

ステロイドの副作用の中には長期間の投与により問題となる副作用がありますので、それ以外について伝える必要がありますね。

表1 ステロイドの副作用と発現時期

数時間から(大量投与)数日から(中等量以上)1-2ヶ月(中等量以上) 3ヶ月以上(少量でも)
高血糖高血圧感染症(細菌)感染症(ウイルス・結核)
不整脈不整脈無菌性骨壊死満月様顔貌
高血糖骨粗鬆症2次性副腎不全
精神障害満月様顔貌骨粗鬆症
浮腫高脂血症高脂血症・動脈硬化
精神障害白内障・緑内障
緑内障ステロイド筋症
ステロイド筋症消化性潰瘍
消化性潰瘍高血糖
高血糖

大島 久二ほか: 臨床研修プラクティス 5(2): 21, 2008

私はパルス療法の時は副作用について主に下記の様に説明しています。

  • 不眠、イライラや頭痛など
  • 血糖値が高くなる
  • 一過性に血圧が高くなることがある
  • 免疫力の低下。うがい手洗いなど感染予防の励行。

また、ステロイドパルス時は体がほてった感じになるといった患者さんや、パルス療法を定期的に繰り返しているうちにニキビができたといった患者さんを経験したことがあります。

まとめ

いかがでしたか?

ステロイドについては参考書で勉強できますが、私はファイザープロというサイトに登録しそちらも参考にしています。皆さんの参考にもなれば良いです。


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