私が処方監査をする中で、苦手な薬剤がいくつかあります。その一つにテモゾロミドがあります。
休薬期間が必要な薬剤ということで処方監査にはとても注意を払いますし、また、どの治療段階かによって投与量や投与方法が異なるので、必ず曖昧にせず添付文書などに立ち戻り監査を行います。
それでは、内服のテモゾロミドの投与方法や副作用、支持療法についてみていきましょう!
用法用量
初発か再発かで異なるので、かなりややこしいですね。
【初発の悪性神経膠腫の場合】
放射線との併用にて、1回75mg/㎡を1日1回連日42日間経口投与し、4週間休薬する。
その後、テモゾロミド単独にて1回150mg/㎡を1日1回連日5日間経口投与し、23日間休薬する。
これを1クールとし、次クールでは1回200mg/㎡に増量することができる。
【再発の悪性神経膠腫の場合】
1回150mg/㎡を1日1回連日5日間経口投与し、23日間休薬する。
これを1クールとし、次クールでは1回200mg/㎡に増量することができる。
*再発又は難治性のユーイング肉腫にも適応はありますが、今回は悪性神経膠腫に絞ってお話させていただきます。
テモゾロミドが処方された時は必ずカルテを開いて治療はどの段階なのかを確認するようにしています!
また、食事の影響で吸収が低下するので空腹時に服用します。
副作用
倦怠感、頭痛、骨髄抑制、吐き気、嘔吐、食欲不振、便秘、下痢、疲労 など
放射線照射併用時には、脱毛や発疹もみられます。
重大な副作用として…
ニューモシスチス肺炎、B型肝炎ウイルスの再活性化などにも注意が必要です。
投与継続や休薬や減量基準となる好中球、血小板の値も添付文書に記載されていますので、要確認です。
B型肝炎については事前にスクリーニングの必要があります。
以前、B型肝炎についてまとめた記事を書きましたので、ぜひそちらも参考にしてみてください♪
支持療法
ニューモシスチス肺炎の予防策
リンパ球減少症やCD4陽性細胞の減少が関連している可能性が示唆されており、予防対策として下記が推奨されています。
①ST合剤1錠を隔日あるいは連日内服(4週間継続を1サイクル)
②ペンタミジン300mgを1回噴霧吸引(4週間を1サイクル)
ST合剤はニューモシスチス肺炎予防の第一選択薬ですが、皮膚掻痒感、皮疹などの発現頻度が高く、副作用発現時には速やかに②に切り替えるといった使い分けになります。
ちなみに、アトバコンもニューモシスチス肺炎の予防措置として保険承認されていますが、副作用でST合剤の使用が困難な場合に使用するものです。
また、ガイドラインでは、テモゾロミド使用時のニューモシスチス肺炎の予防ではなく、HIV患者やニューモシスチス肺炎のリスクがある患者(CD4+細胞数が目安として200/m㎡未満、ニューモシスチス肺炎の既往歴がある等)における予防薬という位置付けです。
(ペンタミジンは吸入という手間があるので、実臨床ではST合剤の継続が難しい場合はアトバコン内服に切り替えることが多い私の印象です。)
制吐剤
テモゾロミドは制吐薬適正使用ガイドラインにより中等度制吐リスクに分類されます。
添付文書では悪心、嘔吐、食欲不振などの消化器症状が高頻度に認められるため、適切な対応をとるよう記載されています。
高度・中等度リスクの経口抗がん薬に対して,MASCC/ESMO ガイドライン2016 では,5-HT3受容体拮抗薬,副腎皮質ステロイドの2 剤併用が推奨されています。NCCN ガイドライン2019 では,5-HT3受容体拮抗薬の経口連日投与が推奨されていますが,テモゾロミドでは,日常臨床において治療目的や放射線治療併用のために副腎皮質ステロイドが併用されていることが多いようです。
ちなみに5-HT3受容体拮抗薬のカイトリル®︎錠は放射線照射による消化器症状に対して保険適用されますね。
テモゾロミド服用後に嘔吐し錠剤を吐き出してしまった場合でも、同日中に追加服用はしないように指導します。
まとめ
投与量、休薬期間など、処方監査時に注意が必要な薬剤はたくさんありますが、その中でテモゾロミドを紹介しました。
副作用、支持療法などの知識も整理しておけば、患者さんへの服薬指導にも役立ちますので、ご活用いただければ幸いです。
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