先日,整形外科で手術予定の患者さんがこんなことをおっしゃっていました。アレルギー・副作用歴を聴取していた時のことです。
以前ね、週1回のむ薬あるでしょ?1回飲んだだけでとても気持ち悪くなって辞めてしまったの。その時にビタミンD?も一緒に処方されていたんだけど、それも飲まなくなってしまって…
それからしばらくしてカルシウムの摂取はできているけど、吸収されていないと先生に言われたの。結局骨折で手術になってしまったので、ビタミンDは飲んでおいた方が良かったのかもね…とほほ。
あれ、骨粗鬆症治療薬の作用機序が曖昧になっていたなあ…骨粗鬆症治療薬について思い出していきましょう。
骨粗鬆症の病態生理
骨は常に骨吸収と骨形成により新陳代謝され新しい骨が形成されています(リモデリング)。
骨吸収>骨形成となると、骨密度の低下と骨質の劣化が起こり、骨の脆弱化、易骨折性となります。
骨吸収亢進の主な原因は、エストロゲンの分泌低下、カルシウムや各種ビタミンの不足、副甲状腺ホルモンの過剰作用などがあります。
治療法
①生活習慣の改善
食事療法(カルシウム、ビタミンDの摂取)、運動療法
②薬物療法
大腿骨近位部または椎体部に脆弱性骨折があればすぐに薬物治療開始が必要となります。
その他の骨折がある場合は、YAM(若年成人平均値)80%未満であれば薬物治療開始、骨折がない場合でも、YAM70%未満又はTスコア-2.5以下で薬物治療開始となります。
詳しくはガイドラインなどを参照願います。
薬物療法
腸管・腎臓からのCa吸収亢進。
ビタミンK2製剤、活性型ビタミンD3製剤
破骨細胞に作用
ビスホスホネート、エストロゲン製剤、SERM、抗RANKL抗体、ビタミンD3誘導体、カルシトニン製剤
骨芽細胞に作用
PTH(副甲状腺ホルモン)製剤
患者さんの訴えから考える
さて、本題に入ります。
この患者さんはもともと他院で治療を行っていたので、YAMなどの細かい情報は薬剤師である私には分かりませんでしたが、ビスホスホネートと活性型ビタミンD3が併用されていたことを考えると、骨折高リスクですよね。
ちなみに骨粗鬆症の予防と治療ガイドラインによると…
椎体骨折を複数有する例やグレード3の椎体骨折を有する重傷骨粗鬆症症例などの椎体骨折の高リスク患者に対して、アレンドロネート単独投与群に比してアレンドロネート+活性型ビタミンD投与群では投与最初の6ヶ月の新規椎体骨折発生率が有意に低下していた。
骨吸収抑制薬同士の併用療法ではその効果はいずれも限定的である。
ビタミンDは活性型ビタミンD3になると、小腸からのカルシウム吸収を促進して骨量の減少を抑えることにより、骨密度低下抑制効果や、骨折抑制効果が認めれています。
この患者さんの話では、カルシウムを摂取していても、それが骨の形成に使われていないということですから、高Ca血症などの副作用がない限りは活性型ビタミンD3製剤の服用は続けていた方が良さそうでしたね。
週1回のビスホスホネート製剤の代表としてアクトネル®︎錠17.5mg、ボナロン®︎錠35mgの消化器症状について添付文書を見比べてみました。アクトネル®︎錠では胃不快感のみ5%以上で、それ以外の消化器症状は5%未満です。ボナロン®︎錠では5%未満です。
ちなみに、一方は悪心のために服用継続できなくても、もう一方は問題なく服用できたという方にお会いしたことはありますね。
まとめ
ビタミンDがなぜ骨にきくのか?と思っている患者さんは比較的多くいらっしゃるのではないでしょうか。他にも閉経後骨粗鬆症の薬剤としてSERMなど、今回は触れていない薬剤もあります。服用意義をしっかり説明できるよう、知識整理してみると良いですね。
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