こんにちは、Kです。
臨床現場でワーファリンと聞くと、少し気が引き締まりませんか?0.5mgと5mgの処方時の選択ミスや、調剤時の規格間違いは患者さんの命に直結するため許されないミスです。
今回は逆に「あれ、PT-INR全然上がってこないなあ??」という症例にあったときの経験から皆さんに情報提供していきますね。
輸液・栄養剤との相互作用
ワーファリンは、ビタミンKの代謝サイクルを阻害し、ビタミンKの肝における再利用を止めることによって、効果を発揮します。従って、ビタミンKを多く含む食品や薬剤によりワーファリンの効果が減弱してしまうということは皆さん周知の事実ですね。
それでは、ビタミンKの1日の摂取量の目安をご存じでしょうか?日本人の食事摂取基準(2015年版)では、ビタミンKの成人の1日の摂取の目安量を男女ともに150㎍に設定しています。
輸液や栄養剤に含有されているビタミンKの量を調べてみました。
フィトナジオン(ビタミンK1)含有製剤
高カロリー輸液 | エルネオパNF 1号・2号(2000mL) | 150μg |
フルカリック1号(1806mL)/ | 2mg | |
フルカリック1号(903mL)/ | 1mg | |
高カロリー輸液用総合 ビタミン剤 | ビタジェクトA液 | 2 mg/1シリンジ(5mL)含有 |
ネオラミン・マルチV | 2mg/1バイアル | |
肝不全用成分栄養剤 | アミノレバンEN | 5.5 μg/1包 |
経腸成分栄養剤(消化態) | エレンタール | 9μg/1袋 |
経腸成分栄養剤 | ラコール | 12.5μg/200mL |
ダイズ油 | イントラリポス輸液 10%、20% イントラリピッド 10%、20% | 原料のダイズ油に由来する微量のビタミン K1 を含有している(ワルファリンの作用を減弱するおそれがあると相互作用「併用注意」に記載がある) |
メナテトレノン(ビタミンK2)含有製剤
高カロリー輸液用総合ビタミン剤 | 注射用マルタミン | 2mg/1バイアル含有 |
上記の表から高カロリー輸液をピックアップします。輸液は1日量目安2000mLですので、1日量で比べるとエルネオパはフィトナジオン1日150μg、フルカリックは約2mgとなりますね。2mgは1日の摂取量目安150μgに比べてかなり多い量です。
実際に、ワーファリン使用中の方にフルカリックが投与されていて、ワーファリン6mg, 7mg, 8mgと増量してもPT-INRが上がってこず、ワーファリン減量の上でエルネオパNFに変更することで延長があったという症例報告を私の職場でみたことがあります。
現在製造販売されているエルネオパは「NF」というものです。これはNew Formula(新しい組成・処方)という意味で、一部のビタミンと微量元素の組成を海外で広く使用実績のある処方を参考に改訂したものとのこと。エルネオパも元々は2000mL中にフィトナジオン2mg含有していました。NFへの改訂は革新的ですね。
ビタミンK拮抗後のINR
INR 高値の場合、対応として以下の 3 つの段階が挙げられます。ただし、出血の程度及びリスクに加え、血栓塞栓症リスクも踏まえ、INR 是正のベネフィット・リスクを個々の症例考慮し、適切な対応を選択することがも求められます。
①ワルファリンの投与中止
②ビタミンKの投与
③新鮮血漿または濃縮プロトロンビン製剤の投与
緊急での手術や、INR過延長によるビタミンK投与(ケイツーN静注10mgなどで対応)は臨床現場で比較的よくみかけます。そこで私が疑問だったのは、ビタミンK投与後、INRが至適範囲内に上がってこない症例が何例かあったんです。
ここで、Warfarin適正使用情報を参照すると…
ビタミン K を一旦、10mg を超えて大量投与すると、数日から 2 週間、ワルファリンを増量しても抗凝固効果が得られなくなることがあるとのこと。
ビタミンKでの拮抗を行ったあとにINRの延長がみられない場合は安易にワーファリンを増量するのではなく、慎重なINRをモニタリングが必要ですね。
まとめ
いかがでしたか?ワーファリンは相互作用に十分注意が必要ですが、栄養剤・輸液という側面にも注目していれば、薬剤師として介入できるポイントが見つかるかもしれません。
また、採血項目へのINRの追加も薬剤師から提案することもあります。自身を持って介入できるように知識をつけていきましょう♪
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