【手足症候群】フッ化ピリミジン系とキナーゼ系の違い

手足症候群

こんにちは、Kです。

内服の抗がん剤の副作用で有名なものの一つに「手足症候群」があります。特にフッ化ピリミジン系に代表されるカペシタビン(商品名:ゼローダ)や分子標的薬(商品名:ネクサバール、レンビマ、スチバーガなど)は手足症候群の出現頻度が高いと言われていますが、特徴が異なるのをご存知でしょうか?

今回は比較しやすいようにゼローダとネクサバールに絞ってお話していきます!

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まずは基礎知識。手足症候群(手掌・足底発赤知覚不全症候群)のグレード分類を確認しておきましょう。

Grade1疼痛を伴わない軽微な皮膚の変化または皮膚炎(例: 紅斑, 浮腫, 角質増殖症)
Grade2疼痛を伴う皮膚の変化(例: 角層剥離, 水疱, 出血, 亀裂, 浮腫, 角質増殖症);
身の回り以外の日常生活動作の制限
Grade3疼痛を伴う高度の皮膚の変化(例: 角層剥離, 水疱, 出血, 亀裂, 浮腫, 角質増殖症);
身の回りの日常生活動作の制限
Grade4

フッ化ピリミジン系:ゼローダ

5-FUに代表されるフッ化ピリミジン系の薬剤において手足症候群の副作用は知られていましたが、色素沈着など比較的軽度のものが多いです。しかし、カペシタビンは手足症候群の発現頻度が高いと言われており事前に対応が必要とされています。

症状:
しびれやチクチク・ピリピリするような感覚異常から始まり、びまん性の紅斑、腫脹が出現し、進行すると色素沈着も伴います。

発現頻度:約60%

発現機序
明確な発言機序は不明ですが、皮膚基底細胞の増殖能の阻害、エクリン汗腺からの薬剤分泌が原因と考えられています。

発症時期
胃癌術後化学療法に対するXELOX療法の国内第2相臨床試験(2週間服用、1週間休薬)では中央値約50日で発現しています。多くの症例では投与後4か月以内に初発しますが長期にわたり留意が必要と言われています。

休薬
グレード2以上で直ちに休薬。グレード0~1になるまで休薬し初回発現の場合は減量せず再開、2回目の発現以降は1段階減量で再開(用量は添付文書参照)。

(参考)
ゼローダ適正使用ガイド
厚生労働省重篤副作用疾患別対応マニュアル 手足症候群

キナーゼ阻害薬:ネクサバール

症状
手指腹部、関節部や踵のような物理的刺激がかかる部位に限局的に発生することが多く、発赤、知覚異常、疼痛に始まり、水疱の形成に進展します。

発現頻度
特定使用成績調査では51.4%で出現

発現機序
皮膚基底細胞や皮膚血管などへの直接的作用が考えられますが詳細は不明です。

発現時期
投与開始後比較的早期(投与開始6~9週後まで)に発現する傾向があります。
早ければ投与後1~2週から発現し、発現のピークは1か月以内が多い。徐々に発現頻度は減りますが、服用開始から12週間程度は発現好発時期であり注意が必要と言われています。

休薬
Grade2 1回目であれば投与継続、局所療法を実施。7日以内に改善が認められないもしくは2回目 or 3回目であれば、Grade1になるまで休薬、1段階減量で再開。4回目で投与中止(詳細は添付文書参照)。

 

(参考)
ネクサバール適正使用ガイド
厚生労働省重篤副作用疾患別対応マニュアル 手足症候群

対策

症状出現前から保湿をすることが大切です。キナーゼ阻害薬は荷重部位に症状出現しやすいので事前に角質処理を行っておくことが推奨されます。そのほかに足にあった柔らかい靴を履く、熱い風呂やシャワーを控えるなどの日常生活の注意点もあります。症状出現時は局所療法としてステロイド外用剤の塗布を行います。

XELOX療法を開始する患者さんがいらっしゃり、研修医と私で外来主治医から講義を受けたことがあります。外来主治医は、とにかく開始前から保湿するよう説明しているとのことです(そのときはヒルドイドソフト、ウレパールクリームを処方していました)。ベタベタに塗って、手袋をしてもらう、特に男性にはやってもらうよう強く言いますとのことでした。

ちなみにヒルドイドはw/o型、ウレパールはo/w型です。ウレパールは尿素製剤で保湿効果と角質軟化作用がありますが、刺激性があり傷がある場合使用しにくいです。

まとめ

手足症候群は患者のQOLに関わる副作用であり、発症前からの予防が重要となります。

症状がフッ化ピリミジン系とキナーゼ阻害薬で異なるため、細かい点を理解して服薬指導をすると患者さんにわかりやすく説明ができるようになります。また、休薬により改善する副作用であることも説明することで患者さんの不安を少しでも取り除いてあげましょう。

抗がん剤のアドヒアランス向上は薬剤師として介入できるポイントになりますので張り切っていきましょうね!

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