【アレルギーや相互作用】ピロリ菌除菌の疑問

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ピロリ菌除菌といえば、キット製剤が発売されていますが、主な薬剤であるクラリスロマイシンが相互作用が多い薬剤であったり、またペニシリン系でアレルギーがあったりすると、別の薬剤の組み合わせが必要になりますよね。

そのときにどんな薬剤が処方されるのでしょうか?学んでいきましょう!

ピロリ菌除菌療法の処方内容

標準療法は下記の内容ですね。


ランソプラゾール30mg 2錠 2X朝夕食後
オメプラゾール20mg 2錠 2X朝夕食後
ラベプラゾール10mg 2錠 2X朝夕食後
エソメプラゾール20mg 2カプセル 2X朝夕食後
ボノプラザン20mg 2錠 2X朝夕食後
②アンピシリン250mg 6カプセル 2X朝夕食後

③クラリスロマイシン200mg 4錠or2錠 2X朝夕食後

①〜③を7日間投与。

二次除菌療法では、標準療法の③がメトロニダゾール250mg 2錠 2X朝夕食後に置き換わります。

三次除菌両方のレジメンについては今回は割愛させていただきますね。

ペニシリンアレルギーのときは?

さて、ペニシリンアレルギーの患者さんの場合、②のアンピシリンを置き換える必要がありますよね。

PPI1日2回+クラリスロマイシン200/400mg 1日2回+メトロニダゾール250mg 1 日2回 7日間

ただし、クラリスロマイシンに耐性がある場合は除菌率が低下していまいます。また、そもそも3剤併用中に皮疹が出てしまった場合、DLSTでもしない限りはどの薬剤が原因なのかわからないですよね。そんなときには下記レジメンも有効です。

私も実際にボノサップ®で皮疹が出てしまった方に対して処方されているのを見たことがあります。

PPI1日2回+シタフロキサシン100mg 1日2回+メトロニダゾール250mg 1 日2回 7日間

ただし、保険適応外となってしまうので、事前にICが必要となります。処方監査をしていてグレースビット®1日2回!?と思って調べてこのレジメンを知りました、お恥ずかしい。

クラリスロマイシンとの相互作用

クラリスロマイシンは併用禁忌薬や併用注意薬が多いですよね。禁忌で有名どころをいうとベルソムラ®でしょうか。
併用禁忌薬(2021年2月現在)
オーラップ® クリアミン® ベルソムラ® ジャクスタピッド®
アドシルカ® ブリリンタ® イムブルビカ® スンベプラ®
ジメンシ−® コララン® ベネクレクスタ®(漸増期)
さて、問題は併用注意薬ですよね。今回は、スタチン系と睡眠薬、ワーファリンについてピックアップしてみました。
まずはスタチン系から。クラリスロマイシンと併用注意とされているのは、リポバス®(シンバスタチン)、リピトール®(アトルバスタチン)です。
クラリスロマイシンとの併用薬AUC上昇比
リポバス®11.9倍
リピトール®1.8-4.4倍

(参考:これからの薬物相互作用マネジメント 臨床を変えるPISCSの基本と実践,じほう)

10倍以上!?併用注意といえども、無視できない数値ですね…
ちなみに添付文書では併用注意となっていないスタチン系の場合は下記のようになります。
クラリスロマイシンとの併用薬AUC上昇比
メバロチン®予測値1.4倍
ローコール®予測値1.3倍
リバロ®不明
クレストール®予測値1.0倍

(参考:これからの薬物相互作用マネジメント 臨床を変えるPISCSの基本と実践,じほう)

続いて睡眠薬です。添付文書で併用注意とされているのは、ハルシオン®(トリアゾラム)です。
クラリスロマイシンとの併用薬AUC上昇比
ハルシオン®5.1倍
(参考:これからの薬物相互作用マネジメント 臨床を変えるPISCSの基本と実践,じほう)
添付文書では併用注意と具体的に記載されていない薬剤は下記のようになります。
クラリスロマイシンとの併用薬AUC上昇比
レンドルミン®予測値4.0倍
マイスリー®予測値1.5倍
アモバン® 予測値1.6倍
リスミー®予測値1.3倍
ロラメット®予測値1.0倍

(参考:これからの薬物相互作用マネジメント 臨床を変えるPISCSの基本と実践,じほう)

レンドルミン®も結構上昇しますね…
他にも、添付文書には30以上の薬剤が併用注意として挙げられています。
こういう相互作用がある薬剤は除菌期間中は休薬が可能なら休薬をする、休薬が不可能なら代替薬への変更もしくはクラリスロマイシンの含まないレジメンへの変更を検討することが必要となります。
また、ワーファリン®はどれくらいAUCが上昇するという情報は見つけられなかったのですが、ワーファリン®は非常に相互作用が多く、またそれによる有害事象が怖い薬剤でもあります。そもそもアンピシリン、クラリスロマイシン、メトロニダゾールといった抗生剤内服では、ビタミンK産生腸内細菌を抑制してビタミンK産生が抑制され、ワーファリン®の効果増強の可能性があるのが一般的ですよね。

したがって、ワーファリン内服中の方の場合は、除菌療法のリスクベネフィットを考慮する必要があるでしょう。もし除菌療法を行うならば、頻回のINR確認など、慎重な対応が求められますね。

まとめ

いかがでしたか?
特に併用薬との相互作用については、代替案をどうするか、というのは薬剤師だけでは判断できず、医師との相談が必要になってきます。
患者さんが除菌療法を開始前に医師にしっかりと併用薬を確認してもらい、事前に方針が決まっていれば良いですが、「薬局で実はこれも飲んでるんだけど先生に言うの忘れてた…」なんてことがあった場合、薬剤師の腕が試されますよね。
「併用注意だからいいや」と考えたりとか、先生に「併用注意です!!」とだけ言う薬剤師は使えないですよね。笑
除菌中は中止してもらいますか?とか、もう一度患者さんと話して方針決定してもらえますか?とか、一緒に相談していけるのが理想なのかなと個人的に思っています。

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