「この薬は強いのか」という質問、答えるの難しいですよね?今回は私が実際に聞かれた質問から考察してみたいと思います。
まずは、「ゼチーアという薬は強いのか?」という質問です!
本記事は日本動脈硬化学会の「動脈硬化性疾患予防のための脂質異常症診療ガイド2018年版」を参考にまとめていきます。
脂質異常症の薬物治療の適応は
脂質異常症の治療目的は、動脈硬化性疾患の発症、発展抑制です。動脈硬化は全身の血管に生じ、冠動脈疾患や脳血管障害などを引き起こすことは皆さんご存知かと思います。
基本的に生活習慣の改善を徹底しても脂質管理が不十分な場合に薬物療法が考慮されます。ただし、FH(家族性高コレステロール血症)や二次予防の高リスク患者では生活習慣改善と同時に薬物療法を考慮し、一次予防の高リスク患者では、合併する病態の包括的な管理とともに薬物療法による早期のLDL-C管理が考慮されます。
えーと。一次予防、二次予防とは?
冠動脈疾患の既往があれば二次予防へ、非心原性脳梗塞・末梢動脈疾患・糖尿病・慢性腎臓病の既往があると一次予防のうちの高リスクに分類されます。下記フローチャートを参照ください。
動脈硬化性疾患予防のための脂質異常症診療ガイド2018年版: 41, 2018改
一次予防と二次予防では脂質管理目標値が異なりまずが、今回は本題とそれますので割愛しますね。
75歳以上の高齢者の1次予防では,冠動脈疾患予防における薬物療法の意義は必ずしも明らかではないため,主治医の判断で個々の患者の状態を勘案して薬物療法の適応を判断するとガイドラインでは示されています。若年者や閉経前女性で絶対リスクが低い場合にも,薬物療法の適応は主治医判断となります。
薬物療法
ガイドラインでは薬物療法について下記のようにまとめられています。
高LDL-C血症に対する第一選択の治療薬としてスタチンが推奨される。
単剤でLDL-Cの十分な管理ができない場合には、併用療法を考慮する。
TGが500mg/dL以上の場合には急性膵炎の発症リスクが高いため、食事指導とともに薬物療法を考慮する。
次からゼチーア®について考察していきます。
ゼチーア®の特徴
さて、ゼチーア®(エゼチミブ)は”小腸粘膜に存在するNPC1L1経路を介して小腸における食事および胆汁由来のコレステロール吸収を直接阻害する”作用機序をもつ薬ですね。
ガイドラインにも示唆されていますが、スタチンを増量するよりも、本剤を追加するほうが有効と言われています。
製造販売後臨床試験**において、アトルバスタチン10mg単独投与によりLDLコレステロール管理目標値に達していない高コレステロール血症患者125例を対象に、アトルバスタチン10mg及びエゼチミブ10mg併用投与群(47例)、アトルバスタチン20mg投与群(46例)及びロスバスタチン2.5mg投与群(32例)に無作為割り付け12週間投与し、有効性及び安全性が検討されました。
その結果、12週間後におけるLDLコレステロール変化率は、エゼチミブ併用群-25.8%、アトルバスタチン群-15.1%及びロスバスタチン群0.8%という結果でした。
Changes in values (mean [SE]) of LDL cholesterol (mg/dL). *P < 0.001. **
**Curr Ther Res Clin Exp. 2012 Feb; 73(1-2): 16–40.
併用されることが多いですが、ゼチーア錠®10mg単独投与時のLDL-コレステロール値の変化率は約18%と単独でも有効です。ただしリピトール®ではLDL-コレステロール低下率 41%なので、それには劣りますね(ゼチーア®、リピトール®各インタビューフォーム参照)。
副作用など何らかの理由でスタチンが使えない場合に単剤で用いられることもあります。他には、脂肪肝やインスリン抵抗性の改善が報告されています。
それではピースは揃いましたので、どのように患者さんに伝えましょうか?
考察
脂質異常症や治療薬について復習してきました。スタチン系よりも弱いです!と伝えるのはナンセンスですよね。
「この薬は強いのか」という質問をしてくる患者さんの背景にはどんなものがあるでしょうか。この薬は効くから薬さえ飲んでいれば大丈夫と思っている方だったり、もしくはなぜこんなに薬を飲まないといけないのかと思っている方もいたり、様々でしょう。
- 脂質異常症では薬物療法を行っていたとしても、食事療法や運動療法を継続していくことも重要であること
- 脂質異常症の薬の中で第一選択で使用されるのはスタチン系であり、LDLコレステロールの低下作用が強いということ
- ゼチーア®は単独ではそれに比べるとLDLコレステロール低下作用としては弱いが、スタチン単独でLDLコレステロールのコントロールが不良であればゼチーア®の併用が考慮されること
- スタチン系を増量するよりも、スタチンとゼチーア®との併用が有効とされていること
上記のように伝えるのはいかがでしょうか?私も勉強不足な点があるため、もっと良い説明ができる薬剤師の先生もいるかもしれませんね。
薬物療法の意味を理解していただけることは長期にわたる治療において重要ですから、そのお助けを薬剤師としてすることができれば良いですよね。
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