【薬剤師国家試験】現役薬剤師が実務問題を解説してみる

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もうすぐ薬剤師国家試験ですね。

私はかれこれ5年間病院薬剤師として臨床経験を積んできました。今国家試験の実務の問題を見たらどうだろう?と思い、解説してみることにしました。薬学生の皆さんの参考になれば幸いです。

では、第105回薬剤師国家試験、 問264-265より

73歳男性。胃全摘出術後4日目に発熱があり、CRPも上昇していた。胸部単純レントゲン写真で右肺野に浸潤影を認め、喀痰培養の結果にてMRSAが検出されたため、バンコマイシンの投与を開始した。7日間投与したが効果が得られなかったため、病棟担当薬剤師に薬剤の変更について医師から相談があり、作用機序の異なるリネゾリドの静脈内投与を提案した。
検査値:体温38.1℃、CRP5.8mg/L、Ccr44.5mL/min、赤血球数420×104/μL、白血球数4000/μL、血小板数25×104/μL
問265の実務「リネゾリドをこの患者に使用する上での留意点として適切なのはどれか。2つ選べ。」を解説していきます(解説の都合上、選択肢の順番を変更しています)。
 

抗菌薬のTDM

選択肢1「投与終了1−2時間後の血中濃度を測定する必要がある」
選択肢2「中等度腎障害のため、減量して投与する」
 
さて、いかがでしょうか。いずれも×ですよね。
 
リネゾリドは、特に中等度腎機能障害までは血漿中濃度の変化は認められず、用量調整やTDMは不要とされています。
ちなみにTDMの対象となる抗菌薬は、抗菌薬TDMガイドラインよりバンコマイシン、テイコプラニン、アミノグリコシド系、ボリコナゾールです。
 
採血のタイミングは以下のようになります。
TDMのための採血タイミング
▶バンコマイシン、テイコプラニン、ボリコナゾール;トラフ値
▶アミノグリコシド系:トラフ&ピーク
トラフ採血とは投与前30分以内に採血、ピークは点滴開始1時間後(30分で投与した場合、投与終了30分後)のことを言います。
 

点滴時間

選択肢2「効果不十分な場合は、点滴静注時間を15分に短くすることができる」
 
さて、これも×ですね。
 
リネゾリドは30分〜2時間かけて投与します。これは添加物としてブドウ糖5%が1バック300 mL中に15.072g含有しているため、点滴静注する場合の速度は10mL/kg/hr(ブドウ糖として0.5 g/kg/hr)以下にするよう添付文書に記載されています。
 
ブドウ糖の速度急速投与を急速に中止すると、低血糖を起こすことがあるので注意喚起として設定されています。ちなみに体重60kgの人に30分で投与すると約0.5g/kg/hrとなります。
 
ここでブドウ糖の投与速度についてプラスαです。
添付文書では、ブドウ糖の投与速度について0.5g/kg/hrを基本に記載されていますが、静脈経腸栄養ガイドライン(第3版)では、静脈栄養の場合は5mg/kg/min以下(侵襲時は4mg/kg/min以下)で投与することが推奨されています。
 
どういうことかというと、例えば高カロリー輸液の投与速度が速すぎると高血糖になりやすい、ということです。高カロリー輸液投与中の血糖は100-200mg/dLの範囲内に維持するように推奨されています。実臨床で、血糖がやたら高いと思って計算してみると5mg/kg/minよりも投与速度が速かったため、輸液の組成を変更し投与速度が範囲内となるようにしてもらった経験があるので皆さんに共有です。
 

副作用

選択肢4「骨髄抑制を起こすことがあるので、定期的に血液検査を行う」
 
これは正解ですね。
 
添付文書にしっかりと明記されています。14日を超えて投与をする場合は特に注意するよう記載されています。
 
ちなみに同じオキサゾリジノン系であるテジゾリドはRMP(リスクマネジメントプラン)に骨髄抑制が挙げられています。これは、臨床試験レベルではリネゾリドに比較して骨髄抑制の頻度は低かったようですが、類薬のリネゾリドで骨髄抑制の重篤な副作用の報告があり、また14日を超えて投与したときに血小板低下の頻度が高くなる傾向にあるため、テジゾリドについて製造販売後の情報収集のために指定されています。
 
さらに+αしていきますね。話はリネゾリドに戻ります。
ネゾリドには視神経障害の副作用も報告されており、28日を超えないで投与することが望ましいと言われています。
 
さらに副作用について、他のMRSA治療薬であるダプトマイシンは、クレアチニンキナーゼ上昇の副作用の可能性があるため投与時は要モニタリングとなります。
 
 

バイオアベイラビリティ

選択肢5「経口投与が可能な状態になったら、経口剤への切り替えを検討する」
 
これは正解ですね。抗菌薬使用の原則なので特に解説なしです。炎症反応の経過とかも判断材料になってきますね。
 
静注から経口への切り替えについて、リネゾリドは経口投与時のバイオアベイラビリティがほぼ100%なので、静注と同量で切り替えることができます
 
他には、ニューキノロン系のレボフロキサシンなんかも同量で切り替えできますね。セフェム系は経口時のバイオアベイラビリティが低いことで有名です。抗菌薬以外でも静注から経口時の切り換え用量について調べるときは、バイオアベイラビリティを参考にしましょう。
 

まとめ

少し細かいところまで解説してしまいましたが、ふーん程度に思っていただけると幸いです。
 
友達との何気ない会話が試験中にひらめきにつながることを何度も経験してきました。そんな気持ちでこの記事をよんでいただけたら幸いです。

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